しばた@OHPの「まんが極道 1 (1) (BEAM COMIX)」レビュー

まんがの道は修羅の道! 唐沢なをき「まんが極道」

かつてギャグ漫画家といえば、しばしば「1本の鰹節」と例えられたものだった。ギャグ漫画はジャンルの性質上、どうしてもネタの使い回しがしにくく、マンネリ化するとすぐ飽きられる。ウケるギャグ漫画を描いていくには自分の才能をどんどん切り売りしていく必要があり、その結果、肉体的に疲弊し、精神的にどんどんすり減っていく。

その様子が、削るたびに減っていき、削り終わったらなくなってしまう鰹節に例えられたのだ。実際ギャグ漫画の場合、一世を風靡した後、才能を使い果たし、ボロボロになって表舞台から消えていってしまった作家が、ほかのジャンルに比べて多く見受けられる。

しかしこのところ、ギャグをメインとする作家さんでも、長期間一線で活躍し続けている人がポツポツ見られるようになってきたように思う。たとえば吉田戦車がそうだし、今回紹介する「まんが極道」の唐沢なをきもそうだ。

唐沢なをきはデビューしてからすでに20年以上経っているベテラン作家だが、今もなも、「作品を全部読んでいる人がいるのか?」っていうくらい大量の作品を描き続けている。ギャグについても枯れるどころか、若いモンに負けないだけのネタを次々繰り出し、そこにベテランならではの円熟味も加えている。まさに当代きってのギャグ職人といっていいだろう。


●漫画家たちのヤバネタギャグに爆笑&涙せよ

そんな唐沢なをきの最新刊「まんが極道」は、漫画家たち(一部、編集者や読者も含む)の赤裸々な生き様を、爆笑モノのギャグ漫画に仕立て上げた作品だ。そこで描かれるネタの数々は、これがもうたいへんヤバい。そしてやたら面白い。


たとえば第2話「へのへの」に出てくる少年漫画家・天狗岳やまと先生は、人気作家だったのだがスランプに陥り、いい加減な編集者の勧めもあって手抜きをし始める。最初は下書きレベルから始まり、やがては子どもの落書きレベルのものを平気で雑誌に載っけるようになる。そしてそれが不思議と売れてしまう。

第6話に登場する売れっ子少女漫画家の迷中マリ先生は、アヤしい信仰宗教にずっぽりハマって、だんだん漫画をそっちのけになってしまう。

そのほかの作品にもいろいろな漫画家が登場するが、ちょっと漫画に詳しい人だったら、「あの大御所作家がモデルですか?」とかピピーンと来ちゃうようなネタがもりもり詰め込まれている。

さらにちょっと雑誌で新人賞の佳作をとっただけでプロ気取りな漫画家志望者とか、訳知り顔で評論家気取りな読者とか、たいへんイタい人も次から次へと登場する。

しかしそういうヤバネタをいっぱいやっているにもかかわらず、作品全体としてはまったくイヤミになっていない。それどころか、毎回毎回笑える漫画に仕上がっている。ヤバネタてんこ盛りでも、ギャグとしてきちんと昇華されているのだ。これはさすがの職人芸というほかない。


●漫画好きなら100倍楽しめる

この手の漫画家をネタにした漫画は、キャリアのない作家がやると「何ナマイキなこといってやがんでぇ」と思われることもままあるが、そこはやはり唐沢なをき。ギャグという漫画の中でもトップクラスの厳しいジャンルで、20年以上にわたり最前線で仕事をしまくり続けてきた人だけに、そんじょそこらのハンチクでは連中では文句のつけようのないほどの貫禄があるし、それだけの内容に仕上がっている。

少々かたっ苦しいことも書いてしまったが、実際の作品の方はものすごく気楽に読めて素直に笑える漫画だ。漫画知識があまりなくても楽しめるし、漫画マニアや作家ならもっともっと楽しめるはず。まあそんなわけでぜひ購入して、現代ギャグ漫画の第一人者の技を堪能していただきたい。


漫画「まんが極道」1巻
作者唐沢なをき
発売元エンターブレイン
発売日2007年5月25日
価格693円
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